「ナラティブパワー」という言葉が注目されています。
国際政治や政治家の演説などの場面でよく使われる言葉ですが、「ナラティブパワー」はそうした政治家だけに必要とされるものではありません。

自分はどういう人間で、何をしようとしているのか？「⾃分の物語（ナラティブ）」を語り、それを社会との関係性や「私たち」の目指す世界につなげていくことで、何か社会で問題があっても、人々の共感を得て社会を変えていく力にできる、と言われます。

正解の無い時代に、新しい価値を創造していくためには誰にでも「ナラティブパワー」は必要とされるのです。

しかし、「話す力」が弱いと言われる日本人にとって「ナラティブパワー」を磨くことは容易ではありません。

今回のイベントでは、すべての⼦どもが自分の意見を堂々と語れるようになる「話す⼒」の育成に⼒を⼊れる⽵内明日⾹さんと、子ども一人ひとりへの理解をもとに子どもの主体的な探究活動に寄り添い、地域に開かれた「まちの保育園・こども園」を展開する松本理寿輝さんをお招きし、多様な個性とナラティブパワーの関係について考えます。

日本の教育は「読み・書き」が重視され、「話す力」の育成が不足していると感じる竹内さんは、未就学児から大学生までの公教育において「話す力」を養うプログラムの導入を促進するべく活動されています。学校の先生方の負担を軽減するためにも、授業中の子どもへの問いかけを生成AIを用いたアプリで補強し、いずれはメタバース空間で子どもたちがプレゼンするまでを見据えてプログラム開発を進めています。

松本さんは、まちの保育園・こども園で「『まちぐるみ』の子育て」を目指し、一人ひとりの子どもの個性と主体性に基づく創造的な環境と探究的な学びを通して「よりよい未来を創り出す力」を育む保育を試行錯誤の中で実践してこられました。

まちの保育園・こども園での実践をベースに、障がいや違いに関わらず、すべての子どもたちが一人ひとり尊重され、個性・強みを生かしながら共に学べる「ニューロダイバーシティ（脳の多様性）」という概念に基づいたインクルーシブな学校を今年2024年秋に開校予定です。

聞き手は、障がい児教育に以前から関心を寄せていらっしゃる国際社会経済研究所理事長の藤沢久美さんです。

竹内さんと松本さんの実践とビジョンをベースに、多様な個性を「分けず」に「混ぜる」ことが、ナラティブパワーの育成にどのような影響があるのか、議論します。