■授業概要

海の哺乳類の専門家として、これまでに
のべ2000頭以上のクジラを調査解剖してきた田島さん。
クジラやイルカが打ち上げられたと聞けば、
全国どこへでも大荷物を抱えて駆けつけます。
何十トンもある巨大なクジラを移動したり、
解剖することは、大きな身体的負担や危険を伴います。
というのも暑さのなかで腐敗の進んだクジラの死体は
「大爆発」を起こすことがあるから。
解剖に伴うすさまじい臭いからくる「異臭騒ぎ」など、
海獣学者の研究生活には、ふつうの暮らしからは
想像もできない珍事がいっぱい。

でも大変なことを大変とも思わずに
田島さんが研究に没頭できるのは、
クジラがどうして陸を捨てて海に戻ったのか、
海での暮らしにどんな風に体をあわせていったのか、
同じ哺乳類の仲間として愛着と好奇心を持っているから。
もともとは牛が大好きで獣医学の道に進んだ田島さんは、
カナダのバンクーバーで出会った野生のシャチに一目惚れしてしまい、
海の哺乳類の研究者として生きていくと心に決めたそうです。
海岸に打ち上げられてしまい不幸にも命を落としてしまった
「海の仲間」の遺体ひとつひとつに耳を傾ける田島さんは、
いったいどんなメッセージを受け取っているのでしょう。
クジラは私たちに何を教えてくれるのか？
田島さんにお聞きしたいと思います。

■講師：
田島木綿子（たじまゆうこ）さん

獣医師。博士（獣医学）、国立科学博物館 動物研究部 研究主幹。筑波大学生物系准教授。
専門は海棲哺乳類学、比較解剖学、獣医病理学。海の哺乳類の「かたち」と「病気」にまつわるエトセトラを研究。海岸に打ち上がるストランディング個体から各種研究や博物館活動に活用する標本を回収している。
田島さんは、博物館の仕事を描いた早良朋さんの人気コミック『へんなものみっけ！』に登場する「鳴門先生」のモデルになった熱い研究者。著書に『海獣学者、クジラを解剖する。（山と渓谷社）』

■収録日：
2022年11月３日（木・祝）